夜空の鳥の日記

時にそこはかとなく、時につらつらと

『山月記』

中島敦の『山月記』は今まで読んだ本で最も好きな作品。

李徴の姿は私そのものだ。目指すものがありながらそれを切磋琢磨しなかったこと、自尊心を傷つけられるのをいさぎよしとしなかったこと、そして過去を空費したこと。人前に出られなくなった、人と共に生きて行けなくなった姿を「虎と化した」という比喩でもって描いているような気がしてならない。

山月記』との出会いは高校の現代文の教科書。初めて読んだ時から李徴の無念さややるせなさはひしひしと伝わってきて、どうにも他人事には思えなかった。でもまさか本当に自分が李徴と同じ気持ちになるなんて、思わなんだ。