夜空の鳥の日記

時にそこはかとなく、時につらつらと

『黒死館殺人事件』

小栗虫太郎黒死館殺人事件』を読みました。言わずもがな、夢野久作ドグラ・マグラ』、中井英夫『虚無への供物』と並ぶ三大奇書の一つです。学問や知識をひけらかす理解の難しい文章が、カタカナのルビや引用を多く使った読みにくい文体で延々と書かれているため、最後まで読むことすら困難などといわれているとかいないとか。

さて、私は「これは私にとってつまらない」と思った時点で、本も映像作品も読む(見る)ことをやめてしまいます。この本も例に漏れず、途中で投げ出しそうになりましたが、「もうトリックも動機も舞台背景も何だっていいから、とにかくこの殺人事件の犯人が知りたい」という気持ちだけで、ただその気持ち一つにすがることだけで、かろうじて読み進めていました。そのように読み続けていたら、「登場するある人物の身体的特徴が私と同じ」という希少な共通点を知ることとなり、そのささやかな喜びと驚きで爆上がりしたモチベーションで閉幕まで読み通せた次第なのです。

でも、率直な感想は「全然わかんない」です。あんなに知りたかった犯人が分かっても、何も感じませんでした。真犯人が判明する瞬間がミステリーで一番おもしろい場面だと思っていたのに。ネタバレを嫌う私でも、この本だけは読破前にネタバレされても全く支障がなかっただろうなと思ってしまいました。実際、いくつかあるこの本の解説文の中に、「犯人は✕✕✕」と思いっきりネタバレしているものがあったらしいです。この本に限っては事前に犯人の名前を言っちゃっても大丈夫、問題ないと。

そんなこんなで、三大奇書といわれる一冊を全部読み終えたぜというのが、話のタネにでもなるといいな。私はNG質問が多くただでさえ話題に乏しいので。